勝つ為の変革を共に求めたパートナー。2015年の挑戦。

SUPER GT300に参戦するレーシングチーム「GAINER」。2004年からWAKO’Sの製品を採用し、12年という長きに渡りパートナーとしてタッグを組みレースを戦ってきた。

そして2015年、GAINERはGT300クラスにてチームチャンピオン獲得、ドライバーズチャンピオン獲得という完全総合優勝を果たした。

WAKO’Sは独自の機動力を活かしモバイルラボ、オイル分析とアドバイス等でのサポートで参加。共に勝ち取った今シーズンのレースを振り返りながら、GAINERとWAKO’Sのタッグについて語ります。


対談メンバー

GAINER 工場長 技術開発主任 福田 洋介氏(以下 福田氏)

GAINER エンジニア 小笠原 康介氏(以下 小笠原氏)

 

WAKO’S モータースポーツ事業部 小林 哲(以下 小林)

WAKO’S 技術部 潤滑油開発グループ 和田 岳広(以下 和田)


チームタイトル、ドライバーズタイトルを勝ち取り総合優勝。 

小林:今シーズンも一緒に戦わせていただきましたが、見事総合優勝となりましたね。おめでとうございます。

 

福田氏:ありがとうございます。ただ、全てのレースで「勝つぞ!」という意気込みで望んで、結果的にチャンピオンを取れた、と捉えています。

去年はSLS(Mercedes-Benz SLS AMG GT3 )がチームチャンピオンを獲得しましたが、今年はGT-R(NISSAN GT-R NISMO GT3)でダブルタイトルが獲得できました。来年は他のチームももっと努力して来るでしょうし、更に上を目指すにはどうするかという部分で、今年チャンピオンが獲得できたから満足というわけではありませんね。


GT300になると性能調整、勢力図が年々変わるので、チャンピオンをとっても常に課題は残っている状況です。8ラウンドの中で今年勝てなかった部分はどこで、どうするべきだったとか、勝ち方など課題としてあります。

国内だけでなく海外でも勝負できる、そういったチームのパッケージに持って行きたいと考えています。サプライヤーさんにも協力してもらって、更に力を付けていきたいですね。
小笠原氏:スーパーGTはポイント取ると、ポイントの倍のウェイトを積まないといけないのですが、GT-R100Kgまで行きましたからね。
重い状態は車両全てに負担がかかるので、その時に矢継ぎ早にリクエストを出しまして。
でも次のイベントには間に合わせてくれたと言うのは、一番大きいです。高負荷が掛かるサーキットに対して対応していただけました。

福田氏:WAKO’Sさんにも、今年は結構頻繁にモバイルラボで来ていただきましたよね。

小林:はい、モバイルラボは他には無いWAKO’Sの特長でもあります。
WAKO’Sとしては技術者の養成にもなっていますし、分析したオイルの数値でどこまで車の状態を読めるかと言うのも常に勉強していかないと行けない部分だと思っております。
ハード面も含めて毎回環境が変わります。今何が必要とされるかがレースだと即座にわかる。 スピードも含めて結果を求められているので、失敗がゆるされない。その緊張感が常にあります。
出会いは2003年の第5戦。1つの製品から始まった。
GAINERがWAKO’Sを採用したのは2003年の第5戦。当時まだスーパーGTではなく全日本GT選手権(JGTC)と呼ばれる時代でした。 ひとつの製品採用から現在では多岐にわたる製品の使用へと発展し、12年の間パートナーとしてタッグを組んでいます。

小笠原氏:夏場に水温が上がってしまう現象があって、その時にWAKO’Sを試しに採用してみたのがきっかけでしたね。スポット的な採用だったと記憶しています。

 

小林:そうですね。そこから徐々に採用していただく製品も増えて。

当時はフェラーリでしたが、エンジンオイルを調べさせてもらったらちょっと調整した方がよいのではという事になって、たしか弊社のWRを試していただいたりしましたね。

 

福田氏:そうですね。当時も良い物があるなら積極的に試していこうというのがチームの考え方でした。
エンジンを変えたり、とにかく毎年「勝てる状態にする」事、そして常にその状態でとどまらないで、同じ物を使っても進化させていく事をコンセプトにやってましたから。

なのでシーズン中でも様々な変更をしながら戦っていました。

そんな中で、うちの状況がいろいろ変わる中ですぐに対応してもらえる、という事もあって、WAKO’Sさんとの関係が密になっていきましたね。
このコンセプトに賛同して、一緒にやってもらえる所とずっと歩んできたと、言う感じでしょうか。


進化の軌跡。
それは反骨精神とも言えるチャレンジスピリッツから。

小林:ここまでの歴史を振り返っても、なかなかチャレンジングな事をやっていましたよね。特に思い入れのある年はいつ頃ですか?

 

福田氏:そうですね。あえて言うなら2009年頃からでしょうか。

その前年の2008年までは童夢さんが設計した車でやっていました。他の車が進化していく中で、GAINERもエンジンを430のエンジンに変えたり、車両も430に変えて、マイナーチェンジですね。それでこの年のオートポリスではポールポジションが獲れましたが、まだいろいろやりたい事がありました。

その時点で概ね工場設備としては自社で車が作れる状態が出来ていたので、2008年は戦いながら2009年に向けて開発、設計、製作まで自社で行っていました。

小林:たしかその頃は鈴鹿の工場でしたね。

福田氏:そうですね。エンジンの仕様も色々変えていきながら、当然、オイルも色々やってもらってたかな。ただ、その頃はシーズン中のレギュレーション変更も頻繁にありましたから、大変でした。

小林:レギュレーションとの戦いの中でフェラーリ458に行き着くわけですね。

福田氏:そう。でも速そうだからってことでウエイト100kgのせられたり(笑)。吸気も絞られて、GT300の中では最も遅いストレートスピードになってしまったり。 

小林:そこでいよいよR8(Audi R8-LMS ultra)ですね。 GAINERさんといえばフェラーリという印象だったものが・・・

福田氏:はい。まさに「良いものがあれば」の精神でR8にスイッチしました。フェラーリがリアに19インチホイールを選択した事もあって、タイヤを開発していく上でフェラーリでは厳しいかと感じていました。ただ、選択の視点がホイールサイズだったので、その時点ではこれで勝てるかまったくわかりませんでしたけど。1年間R8で戦ってみた結果、この先多少のバージョンアップでは勝てないという結論になって、SLS AMG(Mercedes-Benz SLS AMG GT3 )にスイッチしました。

小林:あの当時、SLSをつかうチームは他にもありましたが、結果を出せたのはGAINERさんだけでしたね。 また、2012年のR8から3年連続で開幕戦優勝でしたよね。用意周到なGAINERさんらしいと言いますか。
2014年にはチームタイトル獲得、今年は完全優勝。GT300のトップチームと長い間一緒にチャレンジ出来ているのはとても有意義と感じています。
勝つ為に良いものを使う。
トップチームの厳しい選択に選ばれ続けた結果、今が有る。
福田氏:最初はお試しで、という事から始まりましたが、振り返ってみてもGAINERは頻繁に車が変わるので、そこに合わせてもらえる所と一緒にやってきた、という事だと思います。
GAINERはスポンサーだからといって毎回そこの製品を使用するとは限らないチームなので(笑)。あくまでも勝つ為に良い物をつかう、というコンセプトは変わりません。 

小林:その変化に我々も応えるべく、技術力と独自の機動力でそのチャンスを活かせてこられた、という事でしょうか。 
最初は一つの製品からの出会いでしたが、毎年選ばれる製品も増えてきて。勝つ為に良い物を探した結果、WAKO'Sを選んでいただけているという事ですね。

福田氏:全てがシビアなレーススペックなので、何で判断するかという事になれば、やはり数値です。何かトラブルが起きたときの判断材料にもなりますし、安心感もあります。

特にGT300のレースでは耐久性がより求められる様になっているので、リアルタイムで開発につなげてもらえると言うのは大きな安心感です。使用感はなかなか言葉で出せるものではないですが、数値が出ると一目瞭然ですからね。

和田:技術スタッフとしても、現場に行って分析をして、チームの方と直接話をしますので、困っている事や要求、現場の温度も一緒に伝わってきますから。厳しい事言われる事は勿論ありますが、そう言う中で製品開発が出来るという事はすごくありがたい経験をさせてもらっています。
リンクする企業コンセプト。GAINERクオリティと共に。 
福田氏:ヨーロッパから見れば日本のSUPER GTはまだ草レースだと思われてる部分があると感じています。
日本ならGAINERという風に世界に、ヨーロッパのチームやメーカーに対して意識を持ってもらいたい。
チームの知名度を上げて行きたいですね。
WAKO’Sさんとも慣れ合いでやっている訳ではないので、実際にプロとしてお互いに求め合って、今年は良い結果がともなったと言う事ですが、それをできるだけ継続していきたいと思っています。

小林:我々も、常にGAINERクオリティを求められていますが、それに応えられる様な体制、製品で望んでいきたいですね。
分析から様々な情報をGAINERさんにフィードバックしていきたいですし。 

和田:WAKO’SとしてもGAINERさんとさまざまな情報を共有できれば、もっといろいろな可能性を求めて試作を重ねるなど、そう言った事も検討できると思いますし。
何よりレースの現場からの注文はレスポンスのスピードも重要ですので、時間のない時にいろいろな事をすると言うのは一番身になりますので。鍛えられていると言う思いもありますね。

福田氏:そうですね。来年は更に注文を(笑)。
今までの「大丈夫です、問題ないですよ」というレベルから、圧倒的に良いと言う状況に持って行きたい。
そんな注文をどんどんして行こうと(笑)。更にもう一歩踏み込んで、もっと過酷な状況の時に対応していただきたいと考えています。

今年、こうやって実績を作る事ができたので、我々も色々な事を限られた時間の中で、効率よくやっていきたいと思います。 

小林:レースの現場で試作品を試して頂く機会を頂戴したり、贅沢な事をさせていただいてます。WAKO’Sはレースの現場で開発されたオイルをそのまま販売していますから。 

福田氏:WAKO'Sさんはケミカルも全部揃ってますから、その辺も凄い。おつきあいが続いている要因でもありますね。
その中でいいものだと感じた物を使っていますが、かゆい所に手が届いていると言う感じですね。 

小林:その褒め言葉・・・また身が引き締まりますね。ありがとうございました。
共に戦ってきた2015年、最終的には総合優勝という結果に繋がった。
GAINERの”勝つ為の変化を自ら求める姿勢”と、WAKO’Sの企業コンセプト”Challenge with You”がリンクし、12年という長きにわたりパートナーとして力を合わせてきた結果ともいえるだろう。
これからも更なる高見を目指すGAINER。WAKO’Sも共に歩むため、これからも変革を求め続ける。

GAINER
京都市左京区に本拠地を置き、SUPER GT300に参戦するレーシングチーム。 1999年、鈴鹿ポッカ1,000kmレースにフェラーリ F-355にて参戦し、GAINERの前身であるTEAM GAINERがスタート。多くの車両遍歴は勝つ為の変革を求める姿勢に他ならない。今年2015年、チームチャンピオン、ドライバーズチャンピオンの両方を獲得し完全優勝を果たす。
オフィシャルHP:http://www.gainer.asia/